こんにちは!
Chromatic Music Lab.です♬
楽譜出版事業「宝音出版」より、
3線譜「エリック・サティ(3つのジムノペディ/3つのグノシエンヌ)」
が出版されました。
この楽譜には、テレビコマーシャルなどでもよく使われている、「ジムノペディ(Gymnopédies)」 の第一番〜第三番と、
奇妙な話や、ミステリアスな映画やドラマにも使われていた、「グノシエンヌ(Gnossiennes)」の第一番〜第三番までを収録しました。
エリック・サティとは?
19世紀末から20世紀初めのフランスの作曲家で、「音楽界の異端児」「音楽界の変わり者」などと言われるほど風変わりな人物だったそうです。
その頃主流だった調性音楽(ダイアトニックスケール7音の組み合わせで構成されている曲)ではなく、グレゴリオ聖歌の音階である教会旋法(モード)を取り入れながらも、調性や和声進行を無視した形にとらわれない自由な発想で、新しい音楽を世に生み出していったそうです。
このような作曲技法は、ドビュッシーやラヴェルなどの作曲家達にも影響を与えたとされており、物語性や感情の表現といったものではなく、気分や雰囲気の表現に重きを置く印象主義の作曲家達を生み出すきっかけになったとも言われています。
自由な作風ゆえに、そのうち調号や拍子記号、小節線や縦線、終止線も消え・・・この楽譜を見てもその独特の個性を感じていただけるのではないでしょうか。
しかし、曲自体に調性や拍子がないわけではなく、「音の中に調性があればそれが事実だし、音の流れの中でできた拍子こそが事実としての拍子だ!」という独自のこだわりがあったようです。
また、音楽は静かに鑑賞するとされていた時代でしたが、そこにある生活に溶け込み邪魔にならない音楽というものを目指し、「家具の音楽」という室内楽曲を作曲したり、同じモチーフを繰り返すといった手法を使った、1分程度の曲を840回繰り返すという「ヴェクサシオン(嫌がらせ)」という曲も作曲しています。
こういった新しいアイデアやイノベーションは、BGMや環境音楽、ミニマル・ミュージックの先駆けになったとも言われており、現代音楽は彼なしでは生まれなかったのではないのでしょうか。
サティの作品の題名は変わったものも多く、
「犬のためのぶよぶよした前奏曲」
「犬のためのぶよぶよした本当の前奏曲」
「干からびた胎児」
「輪まわし遊びの輪をこっちのものとするために彼の足の魚の目を利用する」
など、どのような曲かが気になってしまうようなものも数多くかかれています。
このような曲名をつけた理由として、作品を題名から判断しようとする人を皮肉ったという説がありますが、楽譜の注意書きにも不思議な表現が多く、個人的には曲のイメージを直接的に題名にするとこのような名前になってしまったのではないのか…とも思えてきます。
サティはバレエ音楽なども手がけ、1917年には「バラード」という、脚本はジャン・コクトー、美術と衣装はピカソ、音楽はエリック・サティという何ともすごい芸術家3人によって生み出されたバレエが上演されました。
1924年12月には振り付けも台本もダンサーの即興で行うというバレエ公演「本日休演」の幕間の音楽を担当し、この作品を最後に1925年7月に肝硬変のため59歳で亡くなりました。
収録曲について
ジムノペディ(Gymnopédies)
この楽曲は、1888年に作曲されたピアノ独奏曲で、第1番から第3番までの3曲で構成されています。
1曲ごとにそれぞれ指示があり、
第1番(1ère Gymnopédie ):
「ゆっくりと苦しみをもって」(Lent et douloureux)
第2番(2ème Gymnopédie ):
「ゆっくりと悲しさをこめて」(Lent et triste)
第3番(3ème Gymnopédie ):
「ゆっくりと厳粛に」(Lent et grave)
とあります。
ジムノペディという曲名は、古代ギリシアの神々を全裸で踊り讃える祭典「ジムノペディア」に由来しているとのこと。
グノシエンヌ(Gnossienne)
この楽曲は、1889年〜1891年、1897年に作曲したピアノ曲で、1番から7番まであるとされています。
その中で、24歳の時に作曲された1番〜3番が「3つのグノシエンヌ」として一般的によく知られており、こちらを収録しております。
グノシエンヌという曲名は、ギリシア語で「知る(Gnoríste) 」という動詞の語幹から作った造語だそうです。
演奏者への助言として書かれた注意書きがとても奇妙で、
「思考の隅で…あなた自身を頼りに…舌にのせて」
「外出するな…驕りたかぶるな」
「先見の明をもって…窪みを生じるように…ひどくまごついて…頭を開いて」
といった抽象的な書き込みが特徴的です。
収録曲
3つのジムノペディ(3 Gymnopédies)
3つのグノシエンヌ(3 Gnossiennes)
さいごに
人と同じではない、一般論にとらわれない独自のこだわりや追求により、新しいものを生み出していったサティですが、数々のエピソードも残しており、知れば知るほど興味深いものがあります。
まさに、この3線譜も同じような共通点を感じる事ができ、サティの作品こそ3線譜で追求してみると新しい何かが生まれるかもしれません。
◎エリック・サティ:3つのジムノペディ/3つのグノシエンヌ
(3線譜,クロマチックノーテーション)
・オンデマンド(ペーパーバック)
・kindke